ぼくのAppleMusicLife 6月14日(火)

投稿日: カテゴリー: Journal, ぼくのAppleMusicLife, 安井

 ぼくはツイン・ドラムスが好きだ。ツイン・ドラムのアルバムなら無条件で好きになってしまうし、実際、嫌いなアルバムに出会ったことがない。どうしてと問われても困る。気持ちがいいのである。映画では無条件に横移動が好きで、自分の映画でもすぐにやりたくなってしまうのだが、それと同じようなものだ。オールマン・ブラザース・バンドにしても、グレイトフル・デッドにしても、ドラム2台を擁するバンドは、ライヴでその本領を発揮することが多い。そこでライヴ・アルバムに限ってツイン・ドラムスの名盤をいくつか紹介しよう。

まずは、ジョー・ウォルシュがイーグルスに加入する直前か直後の75年に、サンタモニカで行ったライヴをおさめた1枚から。ぼくが好きなアメリカのギタリストはというと、エドガー・ウインター・グループに参加していたリック・デリンジャー、ブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドに参加していたニルス・ロフグレン、そしてジェームス・ギャング、イーグルスに参加していたジョー・ウォルシュの3人で、彼らそれぞれのソロ・アルバムはどれも愛聴盤なので、このアルバムも悪いわけがない。歯切れがよくて、ちょっとルーズでストレートなアメリカン・ロック。ちょっとずれたかと思うと、再び同じ呼吸を取り戻すというツイン・ドラムの魅力の基本のようなアルバム。

 

 フランク・ザッパである。ザッパというとゴダールと同じで、うるさい人がいて、一見さんは語るべからずみたいな雰囲気があるが、気にすることはない。73年のLAのロキシー・シアターで行われたライヴを収めた本盤は、次にどんな音が出てくるかわからない変幻自在、複雑怪奇な音の玉手箱を超絶技巧の楽師たちがあやつってみせる音のサーカスである。昨年、同公演を収録したDVD「ロキシー・ザ・ムービー」が日本語字幕付きで発売されたので、まさに音の空中ブランコを視覚的にも楽しむことが可能になった。

 

 チューブスと言ってもナツ、ナツ、ナツ、ナツ、ココ~ナッツ♪とは関係ありませんというのが定番の紹介の仕方になっているこのバンド、ヴォーカルだけがロッキー・ホラー・ショー並のグラム・ロック・スターみたいなかっこうをしたり、ザッパもやってましたが、ステージにストリッパー嬢を登場させたり、、今で言うならゴールデンボンバーみたいな色モノ、ゲテモノ路線でサンフランシスコからパンク真っ盛りの77年のロンドンに殴りこみをかけたら大受してしまった模様を収録したのがこれ。ビートルズ・ナンバーをパンクチックに演ったあとのぶあつい2台のドラムソロのギャップがスゴイ。ゲテモノでも演奏はいたって堅実です。でも、このバンド、本当につかみどころがなくて、その後、トッド・ラングレンがプロデュースすればトッド色に染まるし、80年代のヒット請負人デヴィッド・フォスターがプロデュースすればAOR路線で ヒットするし、なんだかよくわかりません。

 

 トリはジェネシスの76、77年のパリでのライヴ。ピーター・ゲイブリエルが脱退し、ドラムのフィル・コリンズがヴォーカルを担当し、先のザッパのアルバムでドラムを叩いていたチェスター・トンプソンがフィル・コリンズの代わりにドラムを叩いている。だからフィル・コリンズが歌っているときはチェスター・トンプソンがソロで叩いているのだが、歌っていないときに突然フィルとチェスターのツイン・ドラムになって、これがツイン・ドラム好きにはたまらない。おまけに「Cinema Show」という曲では、チェスターの代わりにゲストでイエス初期、クリムゾン中期のドラマー、ビル・ブラフォードが叩いていて、フィル・コリンズとの奇蹟的な至福のツイン・ドラムを聴くことができる。欲を言えば、チェスターも加えてトリプル・ドラムが聴きたかった、なんてことを思っていたら……

 

 キング・クリムゾンの昨年11月20日のライヴ盤。ジャケットをよく見てもらえばわかるが、ステージ前面になんと3台のドラム・セットが鎮座し、背後の少し高い台上に、ロバート・フィリップやトニー・レヴィンの姿が見える。その3台のドラムと共に奏されるサウンドの破壊力はすさまじい。クリムゾンの絶頂期である中期のサウンドが氷のように冷たい低温の緊張感であったとすれば、今のそれは、マグマのように混沌として熱い高温の緊張感がみなぎっている。ロバート・フィリップ、老いてますますおそるべしである。Apple Musicでは聴けないけど、CDで是非。