入院生活DVD鑑賞日記(仮)1

投稿日: カテゴリー: critic, 入院生活DVD鑑賞日記, 渥美

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『ラブ&ドラッグ』(2011年)エドワード・ズウィック監督

 

 ラブコメ映画を偏愛するわたしが、数あるラブコメの中でも特に偏愛する作品を見直してみました。

 公開は2011年ですが、作品の舞台は1996年。超チャラい楽器屋店員の主人公ジェイミー(ジェイク・ギレンホール)は女癖の悪さから仕事をクビになり、医者一家の家族から無理やり製薬会社ファイザーのセールスマンとして働かされます。

 なかなか慣れない仕事の最中、訪問先の医者の元に来ていた患者マギー(アン・ハサウェイ)と出会い、またまたチャラく彼女を口説き、お互いのこともよく知らないままトントン拍子にセックスをする仲になっていきます。しかし、彼女は若年性パーキンソン病という非常に深刻な不治の病を抱えていました。そのことを恋愛相手に重荷に思われたくないマギーは、あえて異性に深い関係を求めずにいたのです。 

 徐々にマギーに本気で引かれていくジェイミーはあの手この手でマギーの考えを変えさせることに成功し、ふたりはうまくいくかに見えましたが、今度は、ふたりの未来が心配になったジェイミーが、なんとかマギーの病気を「治そう」と、彼女をアメリカ中の病院に連れまわすようになりました。しかしマギーは「治らない」ということを受け入れられないなら一緒にはいられない、と再び彼の元を去ります。

 その後、バイアグラの大ヒットにより昇進したジェイクはカナダへの栄転を機に、自分の過ちに気付き、そのとき彼のとった行動は……、という物語。

 

 若い女性の難病もの、という時点で今のわたしが見るべきではないとはわかりつつ再見してしまい、案の定病室でひとり号泣したのは個人的な事情として仕方ないとして、この作品は本当に優れたラブコメ映画だと再確認しました。健康であれば平凡な恋愛が、難病であるという事実によって特異になるわけではなく、人を愛するということが健常者であろうと病人であろうと誰にとっても大切なことであると教えてくれるからです。

 それは、一見健康に見えるマギーが、手の震えを抑えられなくなるカットが不意に挟まれるように、ジェイミーが実は多動症だったため家族の中で落ちこぼれだった苦悩をさりげなく告白するシーンがあり、大なり小なり人が抱えてる悩みを平等に描くことにより、より真実味を帯びます。

 と書くと、それなりにいい話のよくあるラブストーリーのようにも思えるのですが、わたしがこの作品を特に評価する理由は、ラブ以外の、コメディ要素にも文句のつけようがない点です。

 わたしが考える優れたラブコメ映画の三大要素は、⑴冒頭に無意味にアッパーな音楽⑵ハイウェイを走る車の空撮⑶バカだけど最終的にいいアドバイスをくれるルームメイト、なのですが、それを全て満たしてくれるのです(もちろん、下ネタも必須アイテムです)。ここでは、ジェイミーのおバカな弟が大活躍。

 そのラブとコメディのバランスがたまらないと言うか、笑って泣ける、とはまさにこいう映画を言うのではないのでしょうか。

 

 マギーが、自分の不注意により飲み物の入ったグラスを割ってしまう。その瞬間何かが’爆発して号泣してしまう。そのシーンだけを取り上げると意味がわからないことも、小さなドラマの描写の積み重ねにより、彼女が元気な姿で明るい下ネタ(アン・ハサウェイの見事な脱ぎっぷりも今作の見所!)を連発しながらも、避けることはできない哀しみや辛さが痛々しく伝わってくる、そういう瞬間がこの映画にはあるのです。そこには、嫌という程の孤独があります。誰にも理解されない病気の苦しみ、先の見えない不安。しかし、ジェイミーという存在によって彼女が救われていく過程に、観客であるわたしたちも救われていくでしょう(今作は、最大のクライマックスに、登場人物の会話よりも流れる音楽の方が重要だと言わんばかりの楽曲の使われ方がされています。とんと音楽には疎いわたしにはその真の意味がよくわからないのですが、きっとそこにも何かメッセージがあるのだと思われます)。

 ある種の感情を共感するために映画を見るわけでは決してありませんが、それでも伝わってきてしまう「何か」を感じさせてくれる、そんな映画です。